婚姻届を出さずに事実上の夫婦として暮らす男女の関係を内縁関係といいますが,法律上の夫婦関係ではないので,法定相続人にはなりません。ですから,内縁の夫が財産を残して死亡しても,内縁の妻であるあなたはその財産を相続人として受け取ることはできません。
また,内縁の夫の営む事業を内縁の妻が支えたり,療養看護を行ったりしていても,寄与分はやはり法定相続人でないと認められないため,寄与分を主張することもできないのです。
ただし,ご質問のように,内縁の夫に法定相続人が一人もいないのであれば,内縁の妻は特別縁故者として遺産を取得することが可能です。特別縁故者とは,被相続人と特別の縁故にあった者のことで,相続人の不存在が確定した場合,請求により家庭裁判所から相続財産の分与を受けることが出来る人を言います。民法では「被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者,その他被相続人と特別の縁故があった者」(民法第958条の3)と定めていますが,例えば内縁の妻や認知されていない子,事実上の養子などは特別縁故者にあたるとされています。といっても,特別縁故者として認められるかどうかは裁判所の判断によることになりますので確実なものとは言えません。
特別縁故者として遺産を取得するには,まず相続財産管理人が選任され,法的に相続人が存在しないことを確定するとともに被相続人の負債などを清算しなければなりません。その後,相続人の不存在が確定し,相続財産と負債を清算しても相続財産が残っているのであれば,初めて特別縁故者として残産分与の請求を行うことができるのです。なお,特別縁故者がいない場合や,特別縁故者に与えられなかった遺産は最終的には国庫に帰属します。また,特別縁故者の相続財産分与の請求は相続人捜索の公告の期間満了後3ヶ月以内に申し立てる必要があります。そして,家庭裁判所が相当と認めれば,特別縁故者に清算後の相続財産の全部または一部を分与することになります。
なお,今回の質問・解答からは,内縁関係にある相手に自分の財産を残すための方法はとても限られているのが現実なので,そのような方に確実に財産を残そうとするのであればやはりきちんと遺言を残しておく事がとても大切であることがわかります。