遺言を残す人は,遺言をするときに,自分のする遺言の意味や内容とそこから発生する法律効果を理解し判断することができるだけの意思能力(これを遺言能力といいます。)が必要です(民法第963条)。
そこで,例えば,認知症の方が遺言を作成した場合,遺言の意味を理解できない程度の状態であれば,遺言能力を欠き遺言が無効となります。
また,民法は,遺言能力を一般の行為能力より低い程度で足りるものとしており,未成年者は15歳に達すれば遺言能力があるとして(民法第961条),行為能力に関する民法第5条,9条,13条及び17条の規定は遺言に適用しないとしています(民法第962条)。
ですから,15歳以上の未成年者や被保佐人,被補助人は単独で遺言をすることができます。また,成年被後見人であっても事理を弁識する能力を一時回復したときに,医師2名以上の立会を要件として遺言をすることができます。この場合,立会をする医師は,遺言者が遺言をするときに事理を弁識する能力を欠く状態になかったということを遺言書に付記して,署名し押印しなければならないとされています(民法第973条)。
遺言者は,遺言をするときに遺言能力があれば足りるので,その後に遺言能力を失ったとしても遺言の効力に影響を及ぼすことはありません。